Delphi Arm64EC ネイティブコンパイラツールチェーン - 既存のコードベースを活用して次世代の Windows on Arm デバイスに対応
- RAD Studio 13.1 および Delphi 13.1 では、Delphi コンパイラの新しいネイティブターゲットプラットフォームとして Windows on Arm が導入されました。Delphi でネイティブ Arm バイナリを生成できるようになり、Arm ベースの Mac 上の Windows on Arm 仮想マシンを含む Windows on Arm デバイスで、Intel エミュレーションに依存せず実行できます。
- 新しいターゲットは IDE の Platform Manager から利用でき、同じコードベースから Win32、Win64(Intel)、Win64(Arm)向けのアプリケーションをビルドすることで、ネイティブ Windows 対応をさらに拡張できます。既存の Delphi アプリケーションは、一般的に最小限の変更で新しいプラットフォーム向けに再コンパイルできます。
- 技術的には、Delphi は Arm64EC バイナリを生成します。Arm64EC(Emulation Compatible)は Microsoft が導入した Windows on Arm 向け ABI で、ネイティブ Arm64 コードとエミュレーションされた x64 コードをシームレスに相互運用できるようにします。この方式により、Arm ベースの実行ファイルと Intel 向けライブラリを組み合わせることができ、x64 の呼び出し規約とレジスタの使用方法を維持しながら段階的に移行できます。
- Delphi の Windows on Arm ツールチェーンは LLVM 20 をベースに構築されています。LLVM のリンカー基盤と一部の RTL サービスを活用し、主要なランタイム機能には Microsoft の UCRT、デバッグには LLDB を使用します。Delphi で Windows on Arm 向けにコンパイルされたアプリケーションは、ネイティブの Windows 64 ビット Arm API と直接やり取りします。
- ほとんどの場合、既存の Delphi Win64 アプリケーションは最小限の変更で移行できます。Windows API の大部分は Intel と Arm の両プラットフォームで同様に動作するため、Intel 固有のアセンブリに依存していなければ、比較的スムーズに移行できます。一部のケースではソースコードの更新が必要になる場合があり、現在も Win32 をターゲットとしているアプリケーションは、まず 64 ビットへ移行する必要があります。
Android API レベル 36 および iOS 26 のサポート - 最新のモバイル OS とアプリストア要件への対応
- RAD Studio 13.1 では Android API レベル 36.1 がサポートされました。これは 2026 年 8 月以降、Google Play ストアでアプリを公開するための要件となります。また、ビルドシステムとプラットフォーム JAR ファイルもこれに合わせて更新されています。さらに、Application Uses Permissions ページが刷新され、新しい API レベルで必要となる権限が追加されたほか、Android の FireMonkey フレームワークで使用される Jetpack Core ライブラリもアップグレードされています。
- IDE が既存の Android SDK インストールを検出する仕組みも改善されました。また、Android 共有ライブラリ(.so)のビルドがサポートされ、最近の Android バージョンにおける予測型「戻る」ナビゲーションを無効にする機能も追加されています。
- Apple プラットフォームでは、RAD Studio 13.1 が iOS 26 を正式にサポートし、App Store の要件に継続して準拠できるよう、デフォルトの最小サポート iOS バージョンも引き上げられています。
Bookmarks アドオンを IDE に統合 - 組み込みソースコードブックマーク機能を強化
- RAD Studio 13.1 では、Bookmarks アドオンが IDE に完全統合されました。もともと Parnassus によって開発され、以前は GetIt から提供されていたこの機能が、従来の IDE 組み込みブックマークシステムに代わる、より高機能で拡張性の高いソリューションとして採用されています。
- 強化された Bookmarks 機能では、自動番号付け、高速なキーボード操作によるナビゲーション、正確なコード行への参照とプレビューを備えたアクティブなブックマークの構造化ビューが導入されています。
- 一時的なキャレットブックマークもサポートされました。ブックマークを設定して Escape キーを押すことで、その位置に戻ることができます。これらのブックマークはスタックとして動作し、「後入れ先出し」の順序で移動します。元の位置に戻るたびに、そのブックマークは削除されます。
- これらの改善により、大規模なコードベース内をより簡単に移動し、ソースコード内の重要な場所へすばやく戻れるようになります。
Windows 11 専用 VCL スタイル(IDE にも対応)- Windows アプリケーションの外観を簡単にモダナイズ
- 近年進められている UI モダナイゼーションの一環として、RAD Studio 13.1 Florence では Windows 11 専用の新しい VCL スタイルが 6 種類導入されています。Windows Modern、Windows Modern Dark、Windows Modern Slate Gray、Windows Modern Green、Windows Modern Blue、Windows Modern Purple というカラーバリエーションが用意されています。
- IDE スタイルも更新され、RAD Studio IDE の外観が Windows 11 のルック&フィールにさらに適合するようになりました。IDE はオペレーティングシステムに応じて適切なスタイルを自動的に選択し、Windows 10 では Windows 10 スタイル、Windows 11 では Windows 11 スタイルを使用します。また、ウィンドウの角丸表示、IDE 検索コントロールの改善、ナビゲーションツールバーの更新なども行われています。
FireMonkey Style Designer - より高速で柔軟、モダンな UI スタイリング
- RAD Studio 13.1 では、新しい FireMonkey Style Designer の初期バージョンが導入されています。既存の Bitmap Style Designer とは異なり、FireMonkey 専用に構築され、よりモダンな設計思想を採用しています。
- 新しいデザイナーはスタンドアロンアプリケーションで、開発者による FMX スタイルの作成・管理方法を再構築しています。スタイルオブジェクトの階層やコンポーネント内部の詳細な知識を必要とせず、色、背景、タイポグラフィ、インタラクション状態などの高レベルな概念を中心とした、よりデザイン指向のアプローチを提供します。FireMonkey の内部スタイル形式への変換はツール側で処理されます。
- Style Designer 自体も FireMonkey で構築されており、プロフェッショナルなデスクトップツールを構築できる FireMonkey の能力を示しています。主に開発者向けですが、開発チームと連携する UI/UX デザイナーも利用できるよう設計されています。
DelphiLSP LSIF - ライブラリソースコード内のナビゲーションを高速化
- Delphi 13.1 では、DelphiLSP コード補完・ナビゲーションエンジンのアーキテクチャが拡張されています。Delphi Language Server Protocol(LSP)エンジンが Language Server Index Format(LSIF)をサポートするようになりました。このアーキテクチャ変更は、コンパイラへの依存を減らし、Code Insight のパフォーマンス、安定性、精度を向上させることを目的としています。
- LSIF(Language Server Index Format)システムでは、コンパイラに依存する代わりに、事前生成されたインデックスファイルを利用して DelphiLSP のナビゲーションおよび Code Insight 機能を提供する新しい方式が導入されています。LSIF データが利用可能な場合、Language Server は Go To Definition や Hover 情報などを、より高速かつ安定して提供できます。製品にはコアライブラリ用の LSIF ファイルがあらかじめ含まれており、新しいコンパイラオプションを使用することで、独自パッケージ内で定義したシンボルに対応する LSIF ファイルも生成できます。
- この変更の主な目的は、コンパイラを呼び出すことなく一般的なナビゲーション要求を高速に処理することです。LSIF のサポートによって応答性が向上し、バックグラウンドでの繰り返しコンパイルによって発生していた待ち時間が削減されます。また、コンパイラへのリクエスト数を減らすことで DelphiLSP の安定性も向上します。
C++Builder / Modern Win64 の品質改善
- 13.0 で Clang 20 および C++23 にアップグレードされたことを受け、RAD Studio 13.1 では C++Builder 64 ビット Modern コンパイラツールチェーン全体の品質向上に重点が置かれています。特に、依存関係の解析を高速化する clang-scan-deps ユーティリティが導入され、リンカー呼び出し時の Unicode パス処理も改善されています。
- Windows SDK については、複数の SDK バージョンがインストールされている場合のインポート処理がより堅牢になり、最新の Windows SDK もサポートされています。
- C++ から Delphi ランタイムを利用する際に影響していた複数の問題も修正されています。
IDE およびデバッガの品質改善
- このリリースでは High DPI 環境でのデザイン体験が大幅に改善されています。デザイン時の DPI にかかわらず、フォームを 96 DPI で保存できるようになりました。これは、異なる画面解像度や High DPI IDE 設定を使用して同じプロジェクトで作業するチームに特に有用です。
- さらに、Object Inspector の一部の数値フィールドで簡単な計算を行える新しい仕組みも導入されています。対象となるのは、VCL の TControl およびその派生クラスの Left、Top、Height、Width プロパティです。
- Embarcadero の製品登録機能もモダナイズされ、License Manager アプリケーションと Product Registration ダイアログの両方が大幅に更新されています。これらの VCL アプリケーションは Per Monitor v2 構成による High DPI をサポートし、フォントの更新を含む UI 全体の刷新も行われています。
- デバッガでは「Attach to Process」ダイアログにプロセスアイコンが表示されるようになり、対象プロセスをより簡単に識別できます。
- また、Delphi および Modern C++ の 64 ビットデバッガを中心に、複数の品質改善が行われています。特に例外処理に関連して、従来はデバッガがエラーで停止していた複数のケースが修正され、正常に動作するようになりました。
VCL および FireMonkey の品質改善と小規模な機能強化
- RAD Studio 13.1 では、VCL と FireMonkey の両 UI ライブラリにわたり、幅広い品質改善が行われています。
- FireMonkey では Tinted Glyph がサポートされ、ImageList 内のアイコンの色を変更できるようになりました。これにより、すでに TSpeedButton コントロールで利用可能だった機能と同等の機能が提供されます。この機能は、新しい FireMonkey Style Designer でも使用されています。
- IDE デザイナーで Linux のスタイルおよびビューがサポートされたほか、DirectX テクスチャフィルタリングにも対応しました。また、FireMonkey フォームに埋め込まれた TFrame の配置とマージン処理も改善されています。
FireDAC およびデータベースの改善
- FireDAC ライブラリは、最新のデータベースバージョンへの対応を継続しています。このリリースでは SAP ASE Server 16.1、IBM DB2 12.1、MariaDB Server 12.1 がサポートされています(一部の FireDAC データベースドライバは Enterprise エディションでのみ利用可能です)。
- また、従来方式の SQLite 暗号化が 64 ビット Windows アプリケーションでも利用できるようになりました。
Web ツールの機能強化
- RAD Studio 13.1 では、Web サーバーと Web クライアントの両方で HTTP Server-Sent Events(SSE)モデルがサポートされ、新しい TWebResponseStream、THTTPEvent、THTTPEventSource などのクラスが追加されています。これにより、MCP などのプロトコルへの対応を含む、SSE ベースのアプリケーションを開発できるようになります。
- さらに、WebBroker では C++Builder 向けの Apache 設定がサポートされ、RAD Server Lite には TLS 1.3 の統合サポートが追加されています。